商品説明
芸術・美術
【内容紹介】
漆と人間は一万年という長い付き合いを積み重ね、
特に日本では世界に類をみない漆文化が育まれてきました。
本書は「蒔絵」の人間国宝を指南役に、
漆の素材・わざ・文化史などを切り口に、5章構成・全66話で
深遠な漆文化の魅力を紹介する「漆の教養書」です。
著者の室瀬和美氏は漆芸家で、重要無形文化財「蒔絵」保持者。
60余年にわたって国内外の現場で、自身の創作・国宝などの文化財修理を手がけてきた、漆工芸のスペシャリストです。
「えっ!」と驚くマメ知識あり、ときにマニアックな技術論あり、漆の面白話が盛りだくさん。
技術者ならではの説得力あふれる視点で、「漆」×「伝統」を縦横無尽にひもときます。
【目次】
第一章 漆という素材?
植物としてのウルシ/日本の漆/国産漆の採取時期と特色?/アジアの漆/漆の固まるメカニズム?/「精製」という大発見?/精製漆の種類?/漆の用途?/漆の色/漆は紫外線に弱いのか??
第二章 漆で「作る」?
I 造形と素地
漆で造形するには
素地の材料 木・竹・籐/布・紙?/革/陶磁器/金属
II 装飾技法
漆芸は光の装飾表現
蒔絵/蒔絵の技法 線の表現─付描・描割・針描?/地の表現─地蒔き
蒔絵以外の装飾技法 螺鈿/平脱・平文・金貝・切金/その他の装飾技法
III 材料・道具
漆芸の材料・道具
金粉/その他の蒔絵粉/貝/漆刷毛/へら/塗師刀/研炭
蒔絵の道具 蒔絵筆/粉筒/毛棒/粉匙・粉鎮/爪盤/鯛牙・犬牙/鹿革
第三章 漆で「直す」
「文化財保護」という仕事/漆工品が傷む原因/基本的な修理方法とは/文化財修理者の心構え/漆工品は漆で直す/復元模造制作の役割/漆工品修理の必要性/修理に息づく表現と技
第四章 漆の技術史
文化史こそ学びの宝庫
原始時代─漆創成期/飛鳥・奈良時代─開く国交、広がる漆芸/平安時代─蒔絵の開花/鎌倉時代─躍動する技術と表現/室町時代─唐物と和物、さまざまな展開/桃山時代─戦乱の世の漆芸/江戸時代─受け継がれる伝統様式/江戸時代─新たな創作の出現/明治時代以降─西洋志向と伝統復興
第五章 漆を「伝える」
海外発信という可能性/urushiという言葉で伝える/制作する視点で伝える/漆で心を豊かに/漆器をさわる/エベレストに登ったお椀/漆を植える/漆への理解/「用の美」とは/伝統工芸の真価
【著者略歴】
一九五〇年、東京都生まれ。
幼少より漆芸家の父・室瀬春二の仕事にふれ、漆芸の道へ。
東京藝術大学入学後、松田権六・田口善国に学び、蒔絵を志す。
同大学院美術研究科漆芸専攻修了後、創作と漆工文化財の保存修理に取り組み、一九九一年、目白漆芸文化財研究所を開設。
二〇〇八年、重要無形文化財「蒔絵」保持者に認定。
漆文化を未来につなぐべく、漆の魅力を国内外に発信している。
パブリックコレクションに、文化庁・国立工芸館・大英博物館・メトロポリタン美術館・伊勢神宮ほか多数。