商品説明
日本エッセイ・随筆
【内容紹介】
新しく、鮮明に浮かび上がる〈読み〉
何度も教科書に掲載され、映画化も繰り返されてきた川端康成の「伊豆の踊子」。
日本人にとってもっとも馴染みある文学作品のひとつであるが、その成立過程などはいまだ未知の領域を残す──。
本書では、小説「伊豆の踊子」を形成する要素を複合的に検討し、新たな「伊豆の踊子」論を浮かび上がらせる。
【目次】
はじめに
第一章 「伊豆の踊子」の事実と虚構
一 「伊豆の踊子」執筆とその周辺
二 「伊豆の踊子」成立史考
三 「伊豆の踊子」発表時期への疑問──偶然か必然か
四 被恩恵者根性──精神面と物的面
五 孤児が抱く家族への憧憬
六 川端康成、清野少年、そして大本教
七 川端、踊子、清野少年、初代〈ハツヨ〉──慰安と苦悩
八 「伊豆の踊子」の新たなモデル問題
第二章 「伊豆の踊子」の豊かな、そして確かな〈読み〉をめざして
九 「空想」の解釈に関する見解
十 「私」の金銭感覚の疲弊
十一 四十女の生き方、近代的思考の「私」
十二 湯ヶ野の夜──感覚の麻痺と「私」の混迷
十三 「三」踊子の「真裸」の解釈と踊子・薫の二面性
十四 「物乞ひ旅芸人村に入るべからず」と感情のもつれ
十五 「流行性感冒」の効果
十六 自然描写省筆に関する川端発言
十七 現実的世界と虚構世界との境界領域
十八 テクスト分析による読みの展開
十九 「私」によって語られる〈一人称小説〉
第三章 「伊豆の踊子」研究の展開
二十 「伊豆の踊子」が名作になった理由
二十一 アダプテーションとしての映画「伊豆の踊子」
第四章 川端康成と「地方」──「伊豆の踊子」「牧歌」「雪国」の場合
二十二 「牧歌」「雪国」の場合
二十三 「伊豆の踊子」の場合──旅の目的と、なぜ「伊豆」なのか
あとがき
【著者略歴】
宮城県生まれ。
現在、尚絅学院大学名誉教授(2023年3月退職)。
専門は日本近現代文学、国語科教育学。
主な業績に、『井上靖 人と文学』(勉誠出版、2007年)。
共著に『〈転生〉する川端康成II アダプテーションの諸相』(文学通信、2024年)、『川端文学への視界38』(叡知の海出版、2023年)、『川端康成作品研究史集成』(鼎書房、2020年)などがある。