単行本(実用) 倫理学・道徳 東アジアの死生学・応用倫理へ / 池澤優

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管理番号: BO4621965
発売日: 2024/06/28
メーカー: 東方書店
著: 池澤優

商品説明

倫理学・道徳
【内容紹介】
1960年代に欧米で成立した新しい学問分野である「死生学」(東アジアでは「生死学」ということが多い)、「生命倫理学」の中国・台湾での展開をキーパーソンとその著作の分析からたどる。
死を考えるというのは古くから宗教が担ってきたことであり、往々にして特定の宗教(儒教を含む)が理論構築の大元となっている。
しかし、宗教ではなく、学術としたことで不特定多数の人に受け入れられる素地ができ、公的領域での活動も可能になった。
現代的な宗教の様相を論じるというのがテーマのひとつとなっている。
また、現代において死を考えることは、医療とも密接に関係している。
そこから健康保健制度、インフォームド・コンセント、ホスピスなどについての社会学的な考察もテーマとなってくる。
【目次】
はじめに
第I部 中国の医療倫理・生命倫理
第一章 生命倫理と文化
(1)伝統的医療倫理の基本構造
(2)生命倫理の成立
(3)標準的生命倫理の言説
(4)パーソン論の文化的・歴史的背景
(5)ドイツの生命倫理における「規範的人間像」
(6)日本の生命倫理における「かかわりあいとしての人間」
(7)小結
第二章 中華人民共和国の医療倫理・生命倫理
(1)現代中国の医療倫理
(2)邱仁宗『生命倫理学』(1987)
(3)計画生育--聶精保『沈黙の裏側に--中絶に関する中国人の声』(2005)
(4)李本富・李曦『医学倫理学十五講』(2007)
(5)周海春『中国医徳』(2002)
(6)張大慶『医学人文学導論』(2013)
(7)小結
第三章 中国伝統医学の医療倫理とその近代的変容
(1)職業としての「医」(醫)の成立と病因論
(2)儒教と医療(儒医と庸医)
(3)中国の生命倫理言説の起源--清末・民国期の優生思想
(4)小結
第四章 エンゲルハートのキリスト教生命倫理
(1)『生命倫理の基礎づけ』(初版1986、第二版1996)
(2)『キリスト教生命倫理の基礎づけ』(2000)
(3)エンゲルハートは「回心」したのか?
(4)コメント
第五章 儒教的生命倫理という戦略--健康保健政策との関係
(1)『儒教的生命倫理』の諸論理
(2)儒教は家族をベースとする自由放任主義なのか?
第六章 インフォームド・コンセントに関する議論と文化的差異
(1)儒教的生命倫理によるインフォームド・コンセントの否定
(2)「儒教的生命倫理」の論理とその欠点
(3)中国伝統医学における告知
(4)家族同意と保護性医療に関する法的規定
(5)医学的慣行としての家族告知と患者の希望
(6)二〇〇七年の妊婦死亡事件
(7)妊婦死亡事件を受けたインフォームド・コンセントに関する論争
(8)二元対立的に文化的差異を論じる議論
(9)二元対立的文化観を否定する議論
(10)文化的差異とは何なのか
第II部 台湾の生死学
第七章 死生学とは何か--死の認知運動
(1)ヴィクトール・フランクル
(2)アーネスト・ベッカー
(3)ロバート・カステンバウム
(4)エリザベス・キューブラー=ロスの「死の受容」
(5)日本の死生学
(6)小結ならびに死生学応用倫理センターの死生学構想
第八章 傅偉勲--台湾生死学の創始者
第九章 岸本英夫--宗教学者が死に面したとき
第一〇章 台湾生死学--臨床と喪葬
(1)南華大学生死学系
(2)林綺雲編『生死学』
第一一章 台湾ホスピスケアの生死学--趙可式のあきらめるという積極的な生き方
(1)死生学におけるターミナルケアの位置づけ
(2)善き生(善生)と善き死(善終)
(3)ターミナルケア
(4)ホスピスケア
(5)ケア提供者にして患者であること
(6)まとめ
第一二章 殯葬礼儀師の生死学--陳継成『殯葬礼儀--理論と実務』
(1)中国の喪葬儀礼の構造
(2)『殯葬礼儀』の構成・内容およびその背景
(3)現代台湾における葬儀の一般的手順と礼儀師の役割
(4)考察--職業としての礼儀師の性格とターミナルケア
第一三章 宗教運動としての生死学--鄭志明
(1)死生学と宗教
(2)『道教生死学』(2006)--宗教研究としての生死学
(3)『民俗生死学』(2008)--現代社会批判としての生死学
(4)天地人鬼神五位一体
(5)安寧療護(ホスピスケア)
(6)生と死の儀礼
(7)結論--宗教思想としての生死学
第一四章 中国大陸の生死学--鄭暁江『善死与善終--中国人的死亡観』
(1)生死哲学の基本構想
(2)死生観の類型的検討
(3)死の超克と自殺
おわりに

参照文献一覧
【著者略歴】
1958年生。
東京大学文学部卒。
ブリティッシュ・コロンビア大学大学院アジア学科を1994年に修了、学位取得(Ph.D.)。
筑波大学地域研究研究科を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授、死生学・応用倫理センター長(2024年3月退職)。
専門は中国宗教史、死生学、生命倫理。
主著として『「孝」思想の宗教学的研究--古代中国における祖先崇拝の思想的発展』(東京大学出版会、2002)、『非業の死の記憶--大量の死者をめぐる表象のポリティックス』(共編著、秋山書店、2009)、『政治化する宗教、宗教化する政治』(編著、岩波書店、2018)など。