単行本(実用) 日本エッセイ・随筆 研究者、魚醤と出会う。 / 白石哲也 / 松本剛

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管理番号: BO4412434
発売日: 2024/04/30
メーカー: 文学通信
著: 松本剛

商品説明

日本エッセイ・随筆
【内容紹介】
僕たちは山形の離島、飛島に消えゆく魚醤(ぎょしょう)があると知り、調査へ向かった--。
「魚醤」という調味料をご存じだろうか。
秋田のハタハタで作る「しょっつる」や石川の「いしる」や「いしり」、香川の「いかなご醤油」は三大魚醤と知られているが、実はここ飛島でも古くから魚醤が作られている。
しかしその「飛島魚醤」は、消滅の危機に瀕している文化である。
本書はその面白さを正しく追及した学術ルポだ。
調査過程を追いかけながら、様々なことがわかるように仕掛けた。
島の皆さんへの取材を写真付きで掲載し、飛島魚醤の成分分析、飛島や酒田の漁業の状況など様々な角度から調べ、魚醤を使った料理も考えた。
「飛島魚醤」を取り巻く人や文化、そして生物化学的視点からの記録といえるが、本書の深淵は実は別のところにある。
それは何だったのだろうか。
伝統とは、文化とは一体なにか?
消え去ろうとしている「イカの塩辛」と人との関係は、なにを問いかけるのか。
気候変動が与える生活への影響や、高齢化・過疎化など、いま飛島が直面している諸問題は、より広い規模で顕在化している問題と地続きにあり、私たちにとって他人事ではない。
執筆は、白石哲也、松本 剛、奥野貴士、高木牧子、五十嵐悠、渡部陽子、高橋恵美子。
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【目次】
はじめに─考古学者、魚醤と出会う(白石哲也)
魚醤とは何か?/日本と東アジアの魚醤の起源/考古学者、魚醤と出会う/どうして飛島へ?/魚醤という文化
飛島の地図
調査スケジュール
●第1章 はじめて飛島に行く─失われていく魚醤(白石哲也)
ハワイよりも遠い「飛島」/漁師文化の息づく島/イカの塩辛は「魚醤油」だった?/はじめて島へ行く/物々交換のために/島全体で魚醤作り
●第2章 失われるものを記録・保存したい(白石哲也)
魚醤研究の二つの課題/発酵人類学もこなす実践者/生物物理学者でフィールドワーカー/飛島魚醤を保存する!
コラム(1) 発酵、魚醤の化学(奥野貴士)
●第3章 飛鳥行き研究チーム発足(白石哲也・松本剛・奥野貴士・高木牧子・五十嵐悠)
研究チームの結成(白石哲也)
よりよい未来を模索するために─人類学・松本剛
[四つの下位領域からなる人類学/自己を見つめ直し続ける人類学/目指すべきは他者理解ではなく、ともに未来を創ること]
細胞膜と西洋ナシそして魚醤─生物物理学・奥野貴士
[細胞膜を表現する研究/西洋ナシ畑の環境を表現する研究/細胞膜と西洋ナシの研究の共通点]
魚醤の可能性を世界から探す─山形県水産研究所・高木牧子
[資源利用部の初代研究員/タイへの出張/ハラール適合の魚醤づくり]
研究職から見る地元の海─山形県水産研究所・五十嵐悠
[好奇心を満たすために大学進学/海は人によって印象が異なる存在だ/想定外だった研究職]
調査メモ(1) 長浜さん(第二次調査:2023年7月18・20日)
「イカの塩辛作らねば、魚醤なんかまずいらないわけだけどもよ」
調査メモ(2) 渡部さん(第二次調査:2023年7月18?20日)
「実はわたしはあんまり好きじゃないの。
息子が好きで、作ってくれって言うから」
調査メモ(3) Sさん(第二次調査:2023年7月19日)
今イカは獲れないが、獲れるようになったらまた塩辛をつくるのか?「作んないと思う。
船も解体したし。
86歳だもんだから」
●第4章 調査で判明! 飛島塩辛の作り方(五十嵐悠・高木牧子)
「つゆ」と「ツユ」と「魚醤油」/聞き取り後に食い違う製法/山形県庁で引き継がれた資料/(1)製造の流れ/(2)基本的な製法/(3)各家庭の仕込み方/(4)飛島塩辛のあれこれ
コラム(2) 飛鳥魚醤を担うモノたち(白石哲也)
調査メモ(4) 持ち主が島から去った魚醤樽(第二次調査:2023年7月19日)
●第5章 各家庭の味の違いを調べてみた(奥野貴士)
魚醤の成分を調べてみた/比べることで理解が進む/分析する項目(遊離アミノ酸と塩分)/魚醤を比べてみた
●第6章 イカが消えた海─山形県・日本海北部エリアの漁業(高木牧子)
急速に変わりゆく海/山形県初のブランド施策/「おいしい魚加工支援ラボ」の誕生/そして、魚醤の開発へ/日本海に面する山形の漁業事情/山形県の生産1位のスルメイカ/伝統と結びついた魚たち/獲れなくなってしまった
コラム(3) 塩辛と家族の風景(渡部陽子)
取材日記 渡部陽子さんインタビュー
第二次調査の最後に/魚醤を守りたいと思っていない?/世代と、変遷する伝統/魚醤は他の人に見せたくないもの?
●第7章 消えゆく伝統的食文化を前にして思うこと(松本 剛)
ともに考えることから/飛島塩辛の正体/担い手たちの「そっけなさ」の裏に/年貢としてのスルメイカ/姿を消した飛島のシンボル/”アクターたち”の動的な関係性の網の目/消えゆく伝統を前に私たちがすべきことはなにか/飛島塩辛の可能性と新たな価値付け
コラム(4) 世界の発酵、調味料(松本 剛)
付録 魚醤を使った料理にチャレンジ(Umui 高橋恵美子)
あとがき(白石哲也)
参考文献
執筆者プロフィール
【著者略歴】
山形大学学士課程基盤教育院准教授。
研究分野は考古学。
主要な著書・論文に「宮ノ台式土器成立期の移動・移住-相模湾沿岸地域を対象として」(『法政考古』49、2023年)、「第6章 土器付着炭化物から見る池子遺跡」(共著、『弥生時代 食の多角的研究 池子遺跡を科学する』六一書房、2018年)、「弥生時代における鳥形土製品の役割」(『古代』139、2016年)など。