商品説明
日本文学
【内容紹介】
志賀直哉さいごの門弟であり、遠藤周作に鍛えられた作家渾身の短篇集
かつて遠藤周作編集長の「三田文學」が、一人の新人の小説を二作同時に載せたことがある。人と作品を選んだのはむろん編集長だが、学生の私は眩しい感じで作者の名前を見つめたものだ。そして二十数年後、その作家は自分を発見してくれた小説家への礼を果すかのように、ひとつの短篇を「三田文學」へ届けてきた。それが傑作「ブラッドフォードの王」である。(加藤宗哉〈作家、元「三田文學」編集長)
「法人は社会的になにがしか貢献しようと船出をするものなのだが、目的を果たし終えたならばいさぎよく社会から退場すべきだ……私はいわば倒木だ……朽ちた樹肉から新しいいのちを芽生えさせる倒木だ。芽はたいして日をおかず若木に育つだろう……喜ばしいことに一切、負債を負っていない。活き活き育つだろう。」(「倒木蘇生」から)
【目次】
倒木蘇生
石
リビア往還
太原から殷墟へ
ブラッドフォードの王
雪割草
我が父ラルフ・アースキン
あとがき
初出一覧
【著者略歴】
1942年、北海道中富良野町の生まれ。
北海道大学理学部で雪氷学を修め上京し東京大学工学部で半導体の研究、公益法人で地方の雪対策の研究にあたりつつ小説を執筆。
上京後、志賀直哉氏に師事した。
その後、「三田文學」の編集長遠藤周作氏に指導を仰ぎ三十三歳までに「歯痛」「冬の六花」「線爆発装置の短い夢」などを発表。
五十六歳から執筆を再開し「我妹子」「鳩」「ブラッドフォードの王」などを「三田文學」に発表。
「線爆発装置の短い夢」で第10回文藝賞、「冬の六花」で第8回新潮新人賞、「戦げ罅割草」で第18回三田文學新人賞(戯曲部門)のそれぞれ最終候補。
「未明の丘」で第5回北海道文芸賞選考委員特別賞、「父よそして母よ」で第65回農民文学賞を受賞。
作品集に『未明の丘』(2020年、文芸社)がある。