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日本文学角川文庫/一風変わった家がある。戸口が見当たらず、あるのは格子の嵌った窓ばかりで無用の者の侵入を嫌っている。そこに住む女--白痴女房もまたおかしな人間であった。人間なら誰しも備わっている理知の光が、女の顔からは欠片一片ほども感じられないのだ。その醜悪さに耐えきれず、伊沢はじっと空襲を待った。戦争が、女を殺すのを見届けるために--。