単行本(実用) 経済 円防衛 / 額賀信

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管理番号: BO4878909
発売日: 2024/11/11
メーカー: 時事通信出版局
著: 額賀信

商品説明

経済
【内容紹介】
バブルの崩壊以後、日本経済は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞を余儀なくされた。
この間、政府・日銀は「デフレ脱却」を旗印に、「異次元」なまでの金融緩和政策を展開したが、結局、期待された効果は上げられずに終わった。
著者によれば、長期停滞の真の原因は、わが国のデフレ体質や金融緩和の不徹底にあったのではなく、中国の台頭による国際競争力低下と輸入デフレ、人口減少がもたらす需要不足と潜在成長率の低下、そしてデジタル革命への乗り遅れにこそあった。
つまり「わが国は、停滞の原因究明も、政策課題の設定も間違えたのである」。
異次元緩和から始まった円安は、今や国民の資本逃避につながってきた。
消費者物価は上昇したが、それに見合う金利が形成されていないため、家計は定期性預金を取り崩して対外証券投資を含む投信に走っているのだ。
こうして資本逃避を招き、金利の引き上げや巨額の介入という「円防衛」を強いられる事態を、著者は「亡国の兆し」として警鐘を鳴らす。
本書は、時事通信社の専門誌「金融財政ビジネス」の好評連載を加筆・再構成して書籍化された。
30年にわたる停滞の原因・背景には何があったのか、「デフレ脱却」という目標は果たして正しい政策課題だったのか。
理論と実務を熟知する著者が、さまざまな統計データを駆使し、圧倒的な分析で日本経済の実相に迫っていく。
〈序章〉より抜粋
日本経済の停滞は克服されたのだろうか。
それが私の問題意識だ。
それを検証するために、私は「失われた30年」と言われる過去の再構築を試みた。
失われた30年については、すでに多くの分析がなされ、たくさんの本が出版されている。
しかしそれらによっては伝えきれていないあるいは軽視されている事実がある。
事実の確認や事実に対する評価が曖昧なままのことも少なくない。
現在起きていることの大部分は、過去からつながっている。
私は、現在進行中の出来事、特に経済金融面での出来事を過去とのつながりの中で再検証したいと思ったのだ。
2024年夏の株価暴落はその思いを強くした。
【目次】
序章 停滞は克服されたのか
2024年夏-株価暴落/停滞は克服されたのか/現代史という迷宮
第1章 異次元緩和-失敗と残された課題
物価目標至上主義/積極操作主義/政府との一体的政策運営/リーマン・ショックと政治混乱/高まった日銀批判/量的緩和の挫折/マイナス金利政策/イールドカーブ・コントロール(YCC)/失敗だった異次元緩和/「実験」というとらえ方/「空気」に流された政策決定/残された課題
第2章 中国台頭-グローバル化と輸入デフレ
輸出入取引の増大/対外取引のアジアシフト/黎明期の対中国取引/中国からの輸入が急増した発展期/競合期といざなみ景気/世界の工場の中国シフト/転換期を迎えた対中国取引/100円ショップと賃金・物価の低下/輸入デフレ/輸入デフレと異次元緩和/英国の「大不況」から学ぶこと
第3章 いざなみ景気-実感の乏しい回復
「回復実感の乏しい」いざなみ景気/低くはなかった実質成長率/低かった名目成長率/GDPデフレーターをめぐる誤解/GDPデフレーター下落の犯人/低かった実質国内総所得の伸び/実感の乏しい回復をもたらした交易条件悪化/日本経済停滞の真犯人/対外取引から派生した停滞/輸出入物価/いざなみ景気再考
第4章 円安-始まった資本逃避
為替相場と国際収支/貿易・サービス収支の赤字転換/増え続けた直接投資/金融収支の影響が強まった円相場/円相場の決定要因/自国通貨の為替非対称性/国民を貧乏にする円安/高橋財政と異次元緩和/国富・国力・円相場/始まった資本の海外逃避/介入の効果と限界/為替相場と株価
第5章 人口減少-問われる選択
加速する人口減少/人口減少とマクロ経済/潜在成長率の低下/消費・投資の縮小/人口減少と物価/ニューノーマルの経済政策/移民受け入れ/阪神・淡路大震災後の経験
第6章 バブル崩壊-資産価格の暴落
ひとくくりにはできない30年/資産価格と一般物価/資産価格の暴落/資産価格下落とバランスシート問題/小幅だった物価下落/1920年代との比較
第7章 平成金融恐慌I-混乱と景気後退
金融恐慌/1997年11月-始まった金融恐慌/98年以降も続いた金融機関破綻/減少した金融機関数/深刻な景気後退/景気後退と緊縮財政の影響
第8章 平成金融恐慌II-原因とバブル再考
膨張したバブル/バブル膨張と「空気」/後手に回った対応策/不良債権の性格と責任の所在/危機とリーダー/危機と予防/危機と「空気」/バブルと投機/バブル予防と金融政策
第9章 平成ストック調整-大きかった調整圧力
減少を続けた銀行貸出/昭和金融恐慌時を上回った調整圧力/企業間信用の収縮/戦後の景気調整とバランスシート問題/平成ストック調整/ミクロの調整とマクロ経済/マクロ経済政策の役割
第10章 デジタル敗戦-必要な第2の文明開化
私のデジタル体験/便利な機能とデータの制約/PCが壊れた経験/デジタル社会のビジネスモデル/ビジネスモデルの転換と日本製造業/乏しかったデジタル化ニーズ/リーダーシップの欠如/曖昧な日本語/必要な第2の文明開化
終章 歴史を振り返って-時代の分水嶺
長期停滞の背景/物価目標と為替相場/2%物価目標再考/停滞は克服されたのか/回想1995年/人口減少社会の出現/問われた危機管理能力/デジタル社会の到来/時代の分水嶺になった1995年
【著者略歴】
評論家/1946年、群馬県生まれ。
70年、東京大学法学部卒業、日本銀行入行。
英国オックスフォード大学に留学し経済学修士(MPhil取得)。
神戸支店長を経て、(株)ちばぎん総合研究所社長・会長、(独)勤労者退職金共済機構理事長を歴任。
著書に『よく生きる』『「日本病」からの脱出』『過疎列島の孤独』(以上、時事通信社)、『観光革命』(日刊工業新聞社)、『需要縮小の危機』(NTT出版)など。