商品説明
社会
【内容紹介】
本書は岐阜県下の一山村において、「情報化」に歩調を合せた施策をすすめ「限界集落」を超越「調和ある村づくり(SDGs化)」に成功してきた記録である。
村は、800年の歴史と伝えられ、約100戸が明治以来、戸数も配置も変わらず、長さ4キロほどある谷に沿って生活してきている。
村は、難視聴のうえ生活電話が1台もない1960年代末、全戸一斉に電話がひかれた。
これを機に、村はどう変わるのか、まだどこも実施されていない長期の研究に着手した。
爾来、全家庭を対象とする50年間の7回におよぶ全数調査を始めた。
村びとは「情報化」のステップを静かにあゆむ高度化を積み重ね、村の歴史、伝統、信仰にマッチさせてきた。
村の自然に溶け込んだ生活が維持され、人口流失や社会生活の立ち遅れを乗り越えてきた。
さらには購買行動の広範化・遠距離化、通婚圏の多様化、教育の高等化、産業の多角化等の新しい生活方法を生んだ。
この村の50年間を、7回にわたり全家庭を対象に調査するという定点観測をおよそ100人の研究者、大学院生、留学生、学生たちがバトンを受け継ぎながら実施、世界に例を見ない記録になった。
村は戸数、その配置、生活、伝統もさほど変わらぬ内容を維持し続けている。
「地域の情報化」に新しい展望を示すものである。
監修者田村紀雄氏による一文
【目次】
はじめに 通信の半世紀、郡上村の50年、そして研究者の50歳 田村 紀雄
I 郡上村という「地域」
第1章 「むらコミュニティ」を考える方法 田村 紀雄
1 むらは生きている
2 郡上村に電話がやってきた
3 村民全部が電話をひいた
4 日本全体の変化にむらは適応をつづけた
5 調査設計にむけた作業仮説
第2章 郡上村からの地域自立へのシナリオ 上田 裕
はじめに
1 村の暮らしと生活文化
2 メディアの発達と村の変化
3 外と繋がるチャンネル:他産地消・地産他消へ
おわりに 自立した地域社会をめざして
第3章 郡上村が集落としての機能を維持している要因 限界集落論を手がかりに- 牛山 佳菜代
はじめに
1 限界集落論の提起から田園回帰へ-先行研究の検討-
2 郡上村の人口推移
3 郡上村に「誇りの空洞化」は生じているのか
おわりに
【コラム】地域社会はどのように把握されるべきなのか? 岩佐 淳一
II 郡上村とメディア
第4章 電信・電話、テレコムへの希求 郡上村とメディアの史的考察- 吉田 則昭
はじめに
1 近世・近代の郡上村
2 「二〇世紀」の想像力
3 電気通信と村の生活
4 村のネットワークとしての交通・輸送・有線放送
5 災害と情報
まとめ
第5章 郡上村のオピニオンリーダーとコミュニケーション・メディア 川又 実
はじめに
1 郡上村のオピニオンリーダー
2 郡上村のコミュニケーション・メディアの変容
3 「家」を中心としたコミュニケーションとメディア
4 メディアのパーソナル化とオピニオンリーダー
おわりに
【コラム】うなぎ伝説 安藤 明之
III フィールドとしての郡上村
第6章 フィールドとしての「郡上村」:初期ブルデューの農山村調査を手がかりに
山崎 隆広
はじめに 本論の目的と射程
1 これまでの郡上村調査を振り返って
2 ブルデューの初期フィールドワークから
3 結論 今後の郡上村調査の可能性
第7章 域外との接触の多様化と域内の有力者に関する認識の変容 吉田 文彦
はじめに
1 分析の方法
2 分析の結果
おわりに
第8章 郡上村主婦の購買行動 齋藤 聖一
はじめに
1 郡上村主婦の購買活動
2 郡上村のチャンネルと取り巻くインフラはどのように変化したのか
結論
【コラム】「郡上村元年」の頃 高橋 順
資料編 郡上村調査の五〇年
1 郡上村における電気通信メディア利用の変化と特徴 質問紙調査を中心に-
牛山 佳菜代
はじめに
1 郡上村調査概要
2 郡上村における電気通信メディア利用の変化と特徴
おわりに
2 郡上村における生活の変化と展望 インタビュー調査を中心に- 川又 実
はじめに インタビュー調査の実行
1 第一次・第二次・第三次「現地調査」インタビュー
2 第四次・第五次・第六次「現地調査」インタビュー
3 個人史としての第六次調査から
4 郡上村の変化
むらの展望
【コラム】テレコム化と中国農村の電話 「郡上村元年」の頃 陳 立新
おわりに
年表 郡上村の情報化
執筆者紹介
【著者略歴】
田村紀雄(監修者)東京経済大学名誉教授
社会学博士。
東京経済大学コミュニケーション学部の初代学部長。
牛山佳菜代(編者)目白大学メディア学部教授
コミュニケーション学博士(東京経済大学)。
専門分野は地域メディア論、
川又実(編者)中央学院大学現代教養学部講師
東京経済大学大学院コミュニケーション研究科博士課程単位取得退学。
NPO法人地域メディア研究所理事。
専門分野はコミュニケーション学、メディア研究、メディアと地域社会研究など。