商品説明
社会
【内容紹介】
気仙沼のリアス・アーク美術館には、東日本大震災の「被災物」が展示されている。
2019年、この展示に出会った姜信子は、「被災物」に応答すべく、
大阪で「被災物」をモノ語るワークショップを始めた。
傷ついたモノを前に、人は思わず記憶の底の声を語りだす。
モノに宿された記憶は、語りなおしを通して、命をつなぐ。
路傍の地蔵や道祖神の謂れのように。
亡き娘のぬいぐるみ、携帯電話の声、山の供養塔、寄り物と漁師の思想、
第五福竜丸事件、東京電力福島第一原発事故による汚染処理水の海洋投棄……
本書は、「復興」の物語からはみだす、小さな〈モノ語り〉の記録であり、
他者の記憶の継承という問いに対する、真摯な応答の記録である。
当事者/非当事者の境界を越えて、命の記憶を語りつぐために。
カラー32頁。
志賀理江子の撮り下ろし新作未発表写真16頁を付す。
【目次】
I 終わりと始まり
「被災物に応答せよ」「第三者による記憶の継承」という問い 姜信子
モノ語り集I
祠/郵便受け/漁船/シュガーポット
記憶の器としての被災物 山内宏泰
II 「モノ」語りは増殖する
「被災物」は記憶を解き放つ 記憶のケアとしての「モノ語り」 姜信子
モノ語り集II
ぬいぐるみ/トランペット/電柱/足踏みミシン/ドラム缶/携帯電話
呼び鈴/トタン板/床板/児童文学全集/椅子/洗濯機/香炉/受話器
座談会1 これは、きっと、新しい神話の増殖が始まっているんだ
「被災物ワークショップ」参加者
III 氾物語?躊躇なく触る
リアス・アーク美術館に眠るもの
案内する人 山内宏泰
写真 志賀理江子
土の時間、水の時間 東琢磨
IV 恵比寿の到来
ナニカが海からやってくる 姜信子
えべっさま、ようきてくれましたな 武地秀実
目覚めよ、ヒルコ 岡本マサヒロ
座談会2 気仙沼リアス・アーク美術館「被災物」の企み
山内明美×山内宏泰×ワークショップ参加者×姜信子
V 新しい祭りへ
南三陸集会+気仙沼への旅 姜信子
エビスが語りて命をつなぐ 川島秀一
【著者略歴】
作家。
1961年横浜生まれ。
著者に、『棄郷ノート』、『声 千年先に届くほどに』、『現代説経集』、『はじまれ、ふたたび』、『語りと祈り』、『忘却の野に春を想う』(山内明美との共著)など多数。
訳書に、李清俊『あなたたちの天国』、ホ・ヨンソン『海女たち』(以上共訳)、キム・ソヨン『数学者の朝』、『奥歯を噛みしめる』、編書に『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』などがある。