商品説明
社会
【内容紹介】
本書を推す!辻原登[作家]
大逆事件の「前夜」と「事件以後」が、豊富な資料と証言、犀利な分析によって正確・精細に描かれる。
当時の新宮を中心とする時空間が生々と甦って来る。
すると、「事件」そのものではなく、「事件」の真実が姿を現わしはじめるのだ。
事実ではなく、真実が。
【目次】
序 辻原 登
山泉 進
第I部
第一章 「大逆事件」と紀州新宮
1 「大逆事件前夜」
2 或る地元知識人の日記から
3 種々の「後遺症」
第二章 禄亭と寒村--廃娼論議をめぐっての絆
【資料】「紀伊の人びと」(1)?(5)東京 荒畑寒村
第三章 大石誠之助の言論にみる「半島的視座」と現代--「大逆事件前夜」の紀州新宮
第II部
第四章 「毒取る」大石誠之助と被差別部落のひとびと
1 ドクトル大石、その人柄
2 無請求主義と医療制度批判
3 貧者へのまなざし
4 中上健次のドクトル評
第五章 禄亭大石誠之助の視た日露戦中・戦後の熊野新宮の諸相
『牟婁新報』紙への係わりと、書かれざりし「熊野放棄論」の行方
前説--幻の「熊野放棄論」
1 誠之助年譜の欠落事項--建物寄付願いの却下と被差別部落論
2 日露戦中・戦後の熊野における「公共事業」
3 廃娼論議--実業派、改革派を超えて
終説--沖野・高木との連携に向けて
第六章 一九〇八、〇九年における、大石誠之助と沖野岩三郎との接点
「新宮はソシアリズムと耶蘇教と新思想との牢ひとや獄なるかも」考
はしがき--明治末新宮の〈文化状況〉に向けて
1 沖野の着任と、禄亭・顕明との紐帯
2 〈国体論〉をめぐって
3 幸徳秋水の来訪とその後
4 〈新思想〉と若者たち
5 一九〇九年の軌跡
おわりに--『サンセット』の挫折
【付 載】 『大石誠之助全集』逸文とテキスト問題
【資料1】 大内青巒論(下) (『日出新聞』明治四十一年八月二日付)
【資料2】 寄書 法律的社会主義を読みて (『熊野実業新聞』明治四十一年九月二十四日付)
【資料3】 翻訳 露西亜より (『熊野実業新聞』明治四十二年五月二十二日付 二千号記念号)
大石誠之助の新発見資料を読んで
【資料】疾病に現はれたる造化の目的(上)(下) 大石禄亭
『大石誠之助全集』全二巻未収録作品一覧
第III部
第七章 高木顕明の紀州新宮時代
はじめに
1 明治末の新宮概観
2 虚心会のころ・間宮小五郎の影響
3 来訪者の系譜・主に大内青巒批判
4 新宮中学の同盟休校
おわりに
第八章 「大逆事件」と成石兄弟
1 「大逆事件」への展開と「紀州グループ」
(1) 「大逆事件」への展開
(2) 石川啄木の慧眼
(3) 成石平四郎と新村忠雄
(4) 成石兄弟、逮捕までの動向
2 成石平四郎のこと
(1) 毛利柴庵の影響
(2) 獄中での仏教思想
3 成石勘三郎の獄中記から
(1) 獄中記に見る生い立ちと嘆願書
(2) 「回顧所感」の内容
(3) 親友庄司富八郎追悼
4 遺家族たちの動向
(1) 処刑後の動き
(2) 娘意知子のことなど
(3) 最近までの動向
第IV部
第九章 堺利彦(枯川)、ふたたびの「熊野行」--遺家族慰安の旅の途中で
はじめに
1 「売文社」と奥栄一のこと
2 「自転車」で風を切って
3 堺利彦の「新宮行」
4 堺の遺家族慰安の旅
5 堺利彦の小品「まぼろし」
第十章 西村伊作・「冬の時代」その「思想的」断片
1 自筆履歴書について
2 社会主義系雑誌にみる若き日の貌
3 雑誌『科學と文藝』創刊への関与ほか
4 「初めての小説」
第十一章 熊野における「大逆事件」余聞
漱石の俳句と大石ドクトル一統、そして中上文学へ
1 漱石の縁者が「大逆事件」関係者へ嫁ぐ
2 誠之助の姉睦世はしっかり者のキリスト者
3 玉置家の人々と中上健次の文学
4 「大逆事件」から「路地解体」への道すじ
5 誠之助の妻や一統の人々は「事件後」を毅然として生きた
第V部
第十二章 大石誠之助における「信仰」の問題
はじめに
1 誠之助とキリスト教・兄余平の影響
2 「大逆事件」・獄中の誠之助・刑死とその後
第十三章 大石誠之助の獄中落書きに寄せて
第十四章 在米・岩佐作太郎の京都帝大学生宛の「公開状」
「公開状」(抄)
第十五章 熊野川を遡る「新思想」
第十六章 牧師作家沖野岩三郎の『宿命』を読み解く
「大逆事件」との遭遇と熊野・新宮時代
はじめに-「有りの儘」と「萬年筆と原稿紙の生まれた話」
1 「懸賞小説に当選して 応募について」の感想から
2 新聞連載時改稿と作品「宿命」の問題
3 新宮時代の初期作品から 438
4 与謝野晶子来訪の問題 442
5 「細部」の「事実」から読む「宿命」
6 「沖野神話」のひとり歩き
おわりに
第十六章付表・牧師作家沖野岩三郎の『宿命』を読み解く(含・関連年譜)
第十七章 与謝野寛の詩「誠之助の死」成立にみる、晶子の「大逆事件」
1 一九一五(大正四)年三月、晶子「熊野行」の意味
2 「誠之助の死」成立の背景
3 与謝野夫妻と沖野岩三郎の文学的出発
【付・参考資料】
第十八章 「大逆事件」の受刑者たち
いわゆる「紀州グループ」と言われた人たちをめぐって
はじめに
1 「犠牲者」六名の人と為り
2 六名のその後
3 成石勘三郎の「獄中手記」と崎久保誓一の「名誉回復」への願い
4 再審請求と棄却の問題
おわりに
第十九章 「大逆事件」と熊野の人びとの「現代」
はじめに
1 「大逆事件」とは-石川啄木の慧眼
2 「大逆事件前夜」の熊野新宮
3 犠牲者の名誉回復から大石名誉市民の実現まで
第二十章 大石誠之助の名誉市民実現をめぐって
1 「咽のど喉に刺さったトゲ」
2 反骨の榾火-大石誠之助の名誉市民推挙を支える信念
3 大石誠之助、名誉市民実現に際して
4 〔年表〕 大石誠之助・新宮市名誉市民実現までの道のり
第二十一章 熊野反骨の系譜
1 十津川からの「眼差し」-文武館と「隠岐コミューン」と新宮でのキリスト教受洗
2 畑下(山口)熊野の自由民権運動時代
3 自由民権運動と熊野地方
4 印東玄得のこと-追悼碑建立の「気骨」の裏側で
5 印東熊児が古河力作に贈った「豆本聖書」
6 異境の地での「大逆事件」研究-仲原清のこと
7 「発禁・熊野誌」六号への濱畑榮造氏の書き込み
8 「煉瓦の雨」の下敷きになった大石余平の最期
9 死刑判決を報じる、幻の「熊野日報」の号外
10 「大逆事件」を機に追放された教師たち-八十三年前の「新聞投稿」に触発されて
11 西浦宇吉の歩み 597
12 沖野岩三郎の「紀南半島夜話」-大石誠之助と津田長四郎への追悼文
13 崎久保誓一、名誉回復への願い
14 坂本清馬、「大逆事件」再審請求の執念と棄却
15 戦争の最中、玉置酉久の讃美歌に誘われて
16 佐藤春夫の父豊太郎の「懸泉堂割譲」への反発
17 佐藤春夫、「老父の賜物」、中国趣味と「強権」への抗いと
18 在野の東欧文学研究・エスペランチスト栗栖継・『真実へのひとり旅』
19 伊達李俊の悲劇
20 管野須賀子の「針文字」展示
21 没後20年の中上健次
22 抵抗の画家・石垣栄太郎は熊野人
23 反戦平和の信念を貫いた女性・北林トモ
24 「人権を取り戻す」-果敢に闘った木村亨
25 堺利彦の故郷、みやこ町・豊津を訪れて
第二十二章 書評など
1 新たな「大逆事件問題」を提起-田中伸尚著『大逆事件-死と生の群像』を読んで
2 I am only a free thinker 黒川創著『きれいな風貌-西村伊作伝』を読む
3 峰尾節堂のこと-田中伸尚著『囚われた若き僧峯尾節堂 未決の大逆事件と現代』を読む
大石誠之助とその周辺・関連年譜
旧版・あとがきに代えて
「あとがきに代えて」の後で
【著者略歴】
1945 年和歌山県新宮市の生まれ。
早稲田大学国文科卒。
和歌山県南部の県立高校で国語科教師、特に母校の新宮高校では27 年間勤務、『新高八十年史』(県立新宮高校同窓会刊)の編纂に関与。
新宮市の県立みくまの養護学校校長を最後に定年退職。
1989 年、新宮市の佐藤春夫記念館開館に伴い、展示計画から係わり、同記念会の理事を歴任、退職後の2007 年9 月から館長。
館の図録『佐藤春夫・芥川龍之介展』『新編図録佐藤春夫』『佐藤春夫と西村伊作展』『許されざる者の世界と辻原登文学ワールド』などを編集。
また、『熊野誌』39 号「特集中上健次」(1994 年2 月)や54 号「「大逆事件」と熊野の現代」(2008 年9 月)の編集等に関与。
『新宮市史資料編』・『本宮町史』・『鵜殿村史』などの編集委員。
作家中上健次が主宰して、1990 年新宮に開講した熊野大学に、準備段階から運営委員として参画。
2001 年に設立された新宮市の「「大逆事件」の犠牲者を顕彰する会」顧問。
日本文学協会、日本社会文学会、初期社会主義研究会、大逆事件の真実をあきらかにする会などの会員、各…